香りと機能

6月の夜にクチナシの香り。それがむっとするようなヨモギのにおいに変わり、盛夏とともにクズの花の甘いにおいに変わる。やがて空気の中に枯れ草、落ち葉のにおいが混ざり始め、刈り取られた田の土のにおいに変わっていく。季節の変化を捉えることが生物の生き残りに必須としたら、植物の放つメッセージを鋭敏に感じ取って代謝のシステムを変えることができれば有利に違いない。「今年の秋は実りが悪そうだ」と感じ取れば、別な種類の食物にシフトしたり、ふだんの秋より多めの脂肪を蓄えるように代謝が変化するというのは進化的にありじゃないだろうか?我々が知らないだけで。異性からのフェロモンが子孫を残せるかどうかをmatingの面で判断するシグナルだとすると、植物からのメッセージはそもそも子孫を養える環境かどうか、自分が生き残ることからして可能かどうかを伝える重要なメッセージだ。異性からのフェロモン同様かそれ以上に反応してもおかしくないのである。だから、天候の良い夏の空気をしっかり吸うことがフィットネスにも効くのではないかとひそかに信じている。つまり、嗅ぐエステというわけだ。