吃音の遺伝子!?

吃音(stuttering)は家系内に多発することがある。パキスタンの血族結婚の大家系で吃音の多い家系では吃音と12番染色体の12q23.3の関係が示唆されていた。この部分を詳しく調べていくと変異のある遺伝子はNアセチルグルコサミン-1-リン酸転移酵素の遺伝子(GNPTAB)であることが判明した。Nアセチルグルコサミン-リン酸転位酵素(GNPT)のα、βサブユニットをコードする。これはマンノース-6-リン酸(M6P)を合成する酵素の一部で、M6Pは細胞内小器官のリソソームへ加水分解酵素を輸送する際の荷札として使われる。リソソームは細胞が取りこんだ不要物質を分解する場所で、これがうまく働かないとムコ脂質が蓄積する。ムコ脂質蓄積症はまれなリソソーム蓄積疾患で骨、結合組織、神経組織に関係する。吃音患者の中にはGNPTのγサブユニットをコードするGNPTG遺伝子に変異を持つものもいた。また同じくM6P合成にかかわる”暴露酵素、uncovering enzyme”の遺伝子NAGPAに変異を持つものもいた。
Kang C, Riazudddin S et al. Mutations in the lysosomal enzyme-targeting pathway and persistent stuttering. NEJM 2010;362:677-685