鉄の未来

「鉄の未来が見える本」新日鉄(株)編という本を読んでいる。鉄の張力は細く引き伸ばすとフェライトとセメンタイトがきれいに並んで強化される。理論的には10000MPa(1mm2で1kgのものを支えられるのが9.8MPa)までいくそうだが、現在は4000-4500MPaが限度で、量産されるつり橋のワイヤは1800MPaくらいとのこと。明石海峡大橋では潮風に腐食されにくいように溶融錫メッキがされていて、このとき鉄の結晶が変性して張力が弱るので、予防のためシリコンを微量に混ぜてある。何kmという鋼線の全長にわたって微妙なシリコンの調整を行っているのだ。明石海峡大橋では直径5mmの鋼線127本×290束のケーブルを使っている。橋の重量は5万トンくらい。計算上は十分余裕があるな。鉄の結晶は面心立方体のオーステナイトと体心立方の結晶に炭素が混じったマルテンサイトがある。温度を上げていくと900度付近と1300度付近で体心立方→面心立方→体心立方と入れかわり、オーステナイトになったときには温度を上げているのに体積が下がるという不思議な現象が起こる。鉄はありふれた材料だが知らないことだらけ。