違う世界へ

「302号室のSさんだけど。」
「どうかしたの?」
「昨日から床にへんな図形描いてるのよ。」
「落書き?」
「そう、大きな円を2重に描いて、その中に接するように三角形を描いて、その真ん中に座ってたの。」
「ふーん、なんか意味あるのかしら?」
「”何かしら、これ?魔法陣?”って聞くとニヤニヤ笑っているから黙って消しといたんだけど。」
「またやったの?」
「そうなのよ。それが、今度は二重の円の間のところに何か字が書いてあるの。それが日本語じゃないし、ローマ字でもないわけ。なんか気味が悪くて。」
「いくら認知症でも厳重に注意しなくちゃね。後で言っとくわ。」
「それが、どこを探してもいないの。」
「いない?3階の窓は開かないし、エレベーターはキー入力しないと乗れないはずよ。」
「それが、例の魔法陣?のところをよく見ると真ん中に少し焦げたような跡があるの。」
異世界に遁走したのかしら??」