井戸

男が骸骨といっしょに井戸のなかをのぞき込んでいる。井戸の囲いは壊れて枯れた井戸のなかに崩れ落ちている。「面白いことないね。」と男が言う。「ほんと、何も面白いことないね。」と骸骨が言う。まわりは岩だらけの丘に曲がりくねった鉄骨の残骸が転がっているばかり。しかし、見よ。本当はこの骸骨は男の幼馴染の少女で、井戸のまわりで二人はよく遊んだ。近くにはスモモの木があって夏にはとって食べたものだ。今が現実なのか?それとも穏やかな日常のなかで枯れた未来を透視しているのか?