河原

「私が小学校1-2年生のころだったかな、家族で田舎に帰省した時の話なんだけど。」
「なんなの?」
「母親と姉が地域のお祭りの手伝いに出かけて私が後から追いかけたの。」
「一人で行ったの?」
「うん、お祭りのある神社の場所は知っていたから。」
「でもちょっと危ない感じするね。」
「普段は全然事件なんか起こらないとこだけどね。」
「それで?」
「途中の橋にさしかかると下の河原から声がするの”おーい、寄ってかないか?”って。それで見てみると若い夫婦と男の子がバーベキューしてるのよ。」
「行ってみたの?」
「うん。なんかとても楽しそうだったから。浅瀬を渡った川の中の島みたいなとこでソーセージを焼いたりしてるの。新しいサンダルが濡れるのがいやだったから川岸で脱いで渡ろうとしたのよ。そのとき急に”きーちゃん何してるの!?”って声で気が付いたの。見たらだれもバーベキューなんかしてないのよ。」
「何なの??」
「通りかかった近所の人が河原でぼーっとしている私を見つけて声をかけてくれたんだけど、10年くらい前にオートキャンプしてた家族が急な増水で流された場所なんだって。」