妖精の夜店

あれは私がまだ小学校の高学年だったころのこと。学校の帰りに神社の森の陰で小さなあかりを見つけた。なんだろうと思って草陰をのぞくと小さな屋台があって20センチくらいの身長のおじさんが鉢巻して座っている。「おじさん、ここで何してるの?」と聞くと
「おや?お嬢ちゃんにはこれが見えるのかい?今日は妖精のお祭りなので店を出してるんだよ。」
「おじさんの店は何?」
「プリクラ屋」
「妖精もプリクラするんだ!」
「ただのプリクラじゃないよ。お好みに修正してくれて、持ち続ければだんだんその通りになるよ。」
「じゃあ私やってもらおうかな?」
「はいよ。色っぽいのと、かわいいのと、上品なのとどれがいい?」
「ちょっと見本見せて。うーん、やっぱりかわいいのかな?」
「はいよ。お待ち。お嬢ちゃんにはお代は負けておくよ。」
「ありがとう。」
こうして半信半疑でプリクラを受け取った。写真の私は私に似てはいるけどホント?っていうくらいかわいくなっていた。当時の私は塾通いに疲れてイライラしてがりがりのメガネっ子だった。
その後20年たって悩みはいまだに小学校高学年のかわいさになっていることだ。「色っぽいの」にしといたらどうだったかなとちょっと思う。
妖精の夜店にはその後一度も出会っていない。