リビングデッド法案

徘徊者管理責任委託法案(仮)が来期の国会に提出予定で議員立法の検討に入った。先のJR東海による徘徊者家族に対する損害賠償裁判を受けて認知症の患者を抱える家族の間に不安が広がっている。保険会社は「徘徊損害賠償保険」の売り出しを検討しているがすでに年金生活で保険料負担に耐えられない家族としては管理責任そのものを放棄したいとの潜在的希望がある。この希望に法的根拠を与えるべく一定レベルの認知症と診断を受けた人については申し出により「保護責任者」の立場を委託できるとするものである。委託された場合法的にはすでに「亡くなったもの」とされ、その生命に対する責任は問われない。徘徊による事故の予防のためには様々な手段が考えられるが「人権」を考慮すると実行に難があるものでも「すでに亡くなっている」のであるから法的には問題がなくなる。これにより閉じ込めあるいは薬物による寝たきり化といった非人道的な対応だけでなく、よりQOLを考慮したGPS付き腕輪、「認知症があり徘徊しています」と大きくプリントした外出着を着せるなどよりマイルドな方法も可能となる。法的に「亡くなった」とされるので相続が発生するが、委託先との契約により一定額を「寄付」という形で納めることになる方針である。成立前から通称「リビングデッド法案」と呼ばれている。(このお話はフィクションです)なお、法案を起草したN氏は「日本は文化的に死者にやさしく生きている弱者に厳しい国ですから」とのコメントを残している。