通俗小説の意味

ショウペンハウエルについて語りながら自分語りをする渡部さんの話で面白いと思ったのは米国で単身赴任しているとき現地の通俗小説を読みまくったということ。そのなかで金持ちの息子が麻薬中毒になった話があって「ヨーロッパに留学させてほしいといったのに父親が許してくれず、そのくせ三流画家の絵を収集していた。そんなことがなければ自分も麻薬などに手をだすこともなかった。」と息子が言い訳する。渡部さんはこれを読んで「子供には必要な時にこそ金をかけてやるべきだ」と痛感したのだそうで、のちに娘さんと息子さんが音楽を志したときに借金をいとわずやらせてあげたのだという。どんな本でも受け手の心に触れるかどうかで、読み手の人生に影響を与えるエッセンスを伝えることがある。そういう意味では「私にとっての古典」というのはそれぞれの人にとってめぐり合うものなのだろう。漫画ばかり読んでいてはかすらないかもしれないが。