Is simple best?

湯浅誠さんのインタビューから

 「政府の中にいようが外にいようが自分は調整の当事者であり、『政府やマスコミが悪い』と批判するだけでは済まない。調整の一環として相手に働きかけたが結果が出ない−−それは相手の無理解を変えられなかった自分の力不足の結果でもあり、工夫が足りなかったということです。そういうふうに反省しながら積み上げていかないと、政策も世論も社会運動も、結局進歩がないと思う」
「橋下さんが出てくる前、小泉純一郎政権のころから、複雑さは複雑であること自体が悪でありシンプルで分かりやすいことは善であるという判断基準の強まりを感じます。複雑さの中身は問題とはされない。その結果の一つとして橋下さん人気がある。気を付けなければならないのは、多様な利害関係を無視しシンプルにイエス・ノーの答えを出すことは、一を取って他を捨てるということです。つまり、世の中の9割の人は切り捨てられる側にいる」
「けれど、自分たちが切り捨てられる側にいるという自覚はない。なぜなら複雑さは悪で、シンプルさが善だという視点では、シンプルかどうかの問題だけが肥大化し、自分が切り捨てられるかどうかは見えてこないからです。それが見えてくるのは、何年後かに『こんなはずじゃなかった』と感じた時。本当はそうなる前に複雑さに向き合うべきですが、複雑さを引き受ける余力が時間的にも精神的にも社会から失われている。生活と仕事に追われ、みんなへとへとになっているんです」

「何かを食べるな」とか「何かを食べろ」という食事法をフードファディズムというが、その背景はやはり「シンプルイズベスト」の考えなんだろうな。バラエティーのある食材を組み合わせて食べる工夫とか手間が面倒でできない、という人がいっぱいというこどだ。人間の体内も様々な欲求のバランスを取りながら生きているが「ビタミンやミネラルが足りないから野菜を食べたい」という声が「甘くないものは食べたくない」とか「酒が飲みたい」といった声に押し切られるとバランスの崩れた人になっていく。