滞留資産流動化促進室

「私ね、自分ではしっかりしているつもりだったのに、この間振り込め詐欺にひっかかっちゃたの。」
「それは大変でしたね」
「それでね落ち込んでたら、なんとお礼状が届いたのよ」
「犯人からですか??」
「それがね、息子の名前なの。ここ何年も電話だけで手紙なんてよこしたことないのにおかしいなって思ったら『先日はお金のトラブルに会って厳しいところを助けていただき、ありがとうございました。助けていただいた御恩は少しずつでもお返しします。一度に全部は無理ですが。とりあえず旅行券を送りますのでお友達と温泉になど行ってらしたらいかがでしょうか?』なんて書いてあるのよ。」
「はーそりゃ犯人にしてはしおらしいですわね。」
「もうやられたと思って情けないやら腹立たしいやらでがっくりしてたけど、ほんとに困っていた人を助けたのかと思うと、ちょっと気持ちも上向いたわ。よかったら一緒に温泉いかない?」

「先輩、なんで私たちこんな詐欺まがいのことしないといけないんでしょうか?」
「個人資産1200兆円の大半は高齢者が『まさかのため』に抱え込んでるだろ?家族が多いうちは子供や孫のライフイベントで使う機会もあったけど少子化でますます動かなくなっているんだよ。滞留した高齢者の資産を御自身の楽しみのために強制的に使っていただくことで内需を活性化するのが我々の役目だ。」