暇つぶしのお話35

「東の海の島は森で覆われていました。道がないので探検は主に川と海岸を通って行われました。資源を探して島に渡る人が増えるにつれ新たな発見がありました。」
「今度は何?」
「湾に面した丘の上に森から何か建造物のようなものが頭を出しているのが見えました。」
テオティワカンみたいなピラミッド?」
「お宝を期待して出かけた探検隊は巨大な石の箱のような建造物を見つけました。一見壊れているところはありません。どこにも入口らしきものがないのです。」
「それこそお宝が眠っていそうな仕掛けだね。」
「いったん真珠のとれる湾まで引き返した探検隊は出会った狩猟民に何か知っているか聞きました。すると、”ああ、それは大昔に太陽を祭っていたところだけど、あるとき祭ってあった御神体を全部アメノイワトに収めて宿っていた神には天にお引き取り願ったんだよ。今は何も入ってないと思うけどね”という答えです。」
「お宝を取られるのが嫌で嘘ついてるとか?」
「そもそも人口の少ない狩猟民にこんな巨大な神殿が作れるか疑問です。問い詰めると狩猟民の答えは”もとはこの島はヒトであふれていたんだよ。神を天に返すって決めたときに『これからは貧しくなるけどいいか?』って皆に聞いて、それでもいいっていう人だけここに残ったんだよ。”ということです。」
「他の人は?」
「西の海の彼方に大陸があってそこへ移住したんだって。」