記憶2

「そうすると記憶というのは編集が不可避だといいたいのかな?」
「記憶に意味が伴うためには一貫したストーリーを持った流れが必要ですね。」
「その物語が正しいとは限らないだろ?」
「たとえ仮説にすぎなくても現実から修正を迫られるまでは話の筋があったほうがいいですよ。」
「耐えがたいくらいいやな話だったら捨ててしまいたくならないかい?」
「全て捨ててしまうと時間は軸を失って瞬間の断片が吹雪のように吹きすさぶ中を漂うことになりますね。」

ゴールデン・マン (ハヤカワ文庫 SF テ 1-18 ディック傑作集)

ゴールデン・マン (ハヤカワ文庫 SF テ 1-18 ディック傑作集)

ゴールデンマンは瞬間の判断だけで有利なほうへ駆け抜けていくイケメンのミュータント。その外見のわりに知性も記憶もないという。