顔のある仕事

「もしも組織の部品になるのじゃなくて取り替えのきかない一員になりたかったら『顔』のある人になりなさい。」
「その役になりきった一種の『仮面』という意味?」
「役を身につけるだけなら代役でもいいでしょう?演劇でもその役者でなくてはという人はほかにない存在感があるものじゃないですか。」
「一般の仕事でそんな大それた存在感なんてないでしょ?」
「でもね、たとえば美容院でもお気に入りの美容師さんがいるかどうかとか、バーでも顔見知りのバーテンダーがいるかどうかで違うでしょ?一方でコンビニやファストフードのマニュアル化された接客は『顔』のないものに近いですよね。これは時間を細切れにしたパートでも一定の質を保つための方法で、それを超えるオリジナリティーは期待されてないわけですよ。でもね、深夜に同じパートの人がいるとなんとなく安心したりしないですか?たいした言葉は交わさなくてもね。」
「そこにいるだけで安心してもらえるような人になるほうがずっと大変ですよ。」