最後のピアニスト

豪華客船が沈没するときに全員が乗れる救命ボートがないということを知って最後まで演奏を続けるピアニスト。じたばたしても始まらないというときには自分の美意識に忠実に生きようというのもありえるかもしれない。国が沈没しそうになったら過去の歴史の中でその美しい部分のみに目を向けてたそがれの黄金の光に浸っているのもいいかもしれない。最近の新書で日本のいいところを取り上げてほめる論調のものが目立つのはそうした空気の表れかもしれない。どうしたらいいかわからず立ちすくむなかで「大丈夫だ、気にするな」といってくれるものを待っているのだ。結局売れるものを探して売るのがメディアの役割なのだから。危機を叫んで歩くのは隠者か預言者か変人の役割なのだろう。